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ラボグロウンダイヤモンド

ラボグロウンダイヤが老舗の救世主に?「ENEY」予想以上の反響のワケ


ライフスタイル 2022/06/07 14:00

ラボグロウンダイヤが老舗の救世主に?「ENEY」予想以上の反響のワケ

シトウレイ , OFFICIAL COLUMNIST
シトウレイの気になる人に会いに行く!


「ラボグロウンダイヤモンド」を使用したENEYのジュエリー

銀座の老舗百貨店「松屋」に、あるジュエリーブランドが新たな風を吹き込んでいる。サステナブルな石としても注目される「ラボグロウンダイヤモンド」を使用したブランド「ENEY(エネイ)」だ。

コロナ禍で伸び悩む松屋の新規事業として、2021年8月にスタートした同ブランドの魅力は、2万円からという手に取りやすい価格と、気軽に身につけられる多様なデザインである。

そんなENEYの世界観を、ブランディングディレクターとして立ち上げ時から支えているのが「Celvoke」元ディレクターの田上陽子。ナチュラルビューティー業界で多くの支持を集めてきた田上と、老舗百貨店がタッグを組んだ注目ブランドの戦略とは。シトウレイがインタビューする。


(左から)シトウレイ、「ENEY」ブランディングディレクターの田上陽子

ラボグロウンダイヤモンドとは?

シトウ:そもそもラボグロウンダイヤモンドって? 天然ダイヤとどう違うか聞かせてもらってもいい?

田上:天然ダイヤは、地底で炭素が数千年から数億年かけて結晶化したものですよね。一方ラボグロウンダイヤモンドは、地底で炭素が結晶化する環境をラボ内に作って育てた合成ダイヤモンドです。欧米では3〜4年前から急速に市場を拡大しています。

合成とはいえ、いわゆる模造石・類似石とはまったく異なります。ダイヤを育てていくので、ふたつとして同じものはできません。アメリカでは、連邦取引委員会によって「ダイヤモンドである」と認められています。

また、天然資源を枯渇させるものではないので、サステナブルな石として海外のセレブリティの間で注目を集めています。ダイヤモンドの採掘現場では、様々な課題も残っていると言われています。ですので、私も「サステナブルな石」というところにとても共感しました。

シトウ:お値段的にも違うの?

田上:全然違います。天然ダイヤの半分ぐらいの価格で買える点も魅力ですね。

合成ダイヤのネガティブイメージを変える

シトウ:ENEYは2021年8月にスタートして、日本でも少しずつラボグロウンダイヤモンドが浸透してきました。まさにゲームチェンジャーじゃないかなと。

「松屋」さんという銀座の老舗百貨店が立ち上げたブランドだという安心感があるからこそ、合成ダイヤにつきまとう”偽物?”というネガティブイメージを払拭できたのかなって。なぜ百貨店でやろうと思ったのですか。

田上:島田さん補足お願いしてもいいですか?

島田成一郎(松屋銀座 スタートアップ事業課長):僕が今の時代の消費者に受け入れられる、新規性のあるブランドを立ち上げたくて。元々売り場を担当していて、コロナ禍で客足が減少するのを目の当たりにしていたので、「現場ではこんなことが起きている、今までと同じことをやっていては生き残れない。だからやらせてください」って上に訴えたんです。

時間はちょっとかかりましたけど、「その熱意があるならやりなさい」といってもらえて。

田上:エナジーがありますよね! 島田さんは大学の先輩で、私がフリーになったのを聞きつけて、声をかけてくれたんです。

あえて攻める「ENEY」のデザイン

シトウ:ENEYってどんなブランドなの?

田上:ENEYのコンセプトは「様々なエナジーを循環させる」です。「ENEY」という名前も、「any」と「energy」の造語なんです。例えば島田さんの熱い思いや、地球のエナジーへの感謝の気持ち、石を持つことでお客さまが感じるエナジーなど、いろんな「エナジー」がENEYをとりまいているイメージです。

私自身、コロナ禍でライフスタイルやウェルネスに関心が向き、「エナジーは目に見えないけれどとても大事なものだ」と気づいたので、このようなコンセプトにしました。

天然石は人にパワーを与えるといわれていますが、ラボグロウンは逆にパワーやエナジーを込めることができて、自分だけの石に育てることができるんじゃないかなと。そういう意味も込めています。

ジュエリーのデザインも「エナジー」をテーマにしています。シーズンごとに別のデザイナーにお願いしているのですが、その基準は「ブランドのコンセプトに賛同してくださる方」ですね。コンセプトはしっかり置いておいて、そこにいろんなデザイナーが考える「ENEYらしさ」が加わったらおもしろいなって。

シトウ:ファーストコレクションをお披露目会で見た時に、「攻めたねぇ!」って印象を受けました。

田上:まさに。「攻め」は常に意識していて。今までのダイヤモンドのイメージを変えたかったんです。バランスは大事ですけど、エッジのあるイメージにしたいと思っていました。天然ダイヤの使用シーンとしてオケージョンに限られている印象があったので、それを変えたいなと。

シトウ:なんだろう、「ザーマス系」とでもいうか。

田上:そう! ラボグロウンダイヤは値段も手ごろなので、デイリーに使ってもらいたいと思って。「かわいいな」と思って見たらダイヤがついていて、「ラボグロウンダイヤっていうんだ」みたいな自然な流れで入ってほしい。

安価なためカッティングも気軽にでき、いろんな形にデザインできるんです。今私がつけている半月型のダイヤも、天然石だともったいなくてなかなかこんな風にカットできません。

シトウ:衝撃的! こんなデザイン本当に初めて見る。こんなことやってもいいんだ!

田上:天然ダイヤではあまり使われないシルバーの台座の商品もあります。プラチナからシルバーにするだけで価格も下がるし、デイリーに使いやすくなるんですよね。

今まで天然ダイヤを使っていたお客さまにも、デザインを楽しめるということで興味をもっていただいています。

シトウ:一番人気のアイテムは?

田上: 繊細な輝きが特徴的なピクセルシリーズです。エナジーの原子を「小さな球体=ピクセル」で表現しているのですが、一つひとつの球体にカッティングが入っているからこその輝きなんです。日本の高い技術から生まれました。


PIXEL VERTICAL SYMMETRY RING TETRA(ピクセル 4連 チェーンリング)、税込2万6400 円

シトウ:うん! すごいキラキラしてる! いろいろ見ていると、同じブランドとは思えないくらいシリーズごとにデザインが全然違いますね。

田上:バリエーションが多いので、いろんな方に刺さるかなと思っています。

シトウ:こんなに違うと新シリーズが楽しみになりますよね。これくらいガラッと変えてくれたほうが、私としてはおもしろいなって思いました。


リングだけでなく、ネックレスやブレスレットも展開。写真はコインシリーズ。

ラボグロウンなら「買いやすい」?

シトウ:デビュー後、反響はどうですか。

島田:昨年8月に立ちあげたタイミングでは予想以上の反響の大きさで。高い売り上げ目標を立てていたんですけど、スタートから1カ月で目標の1.5倍ぐらいになって驚きました。今は落ち着きましたが、「イベントをやってほしい」「店舗で扱いたい」といったお声をいただけることも多く、可能性を感じています。

シトウ:たしかに、大きなダイヤが欲しいとか、手ごろな値段でいいものが欲しいとか、サステナブルなものを身に着けたいとか、様々なニーズに応えられるからこそ、ですよね。

田上:印象的だったのは、自分へのご褒美として「天然ダイヤを買おう」という気持ちにはなかなかならないけど、ラボグロウンなら買いやすいというお声です。

トウ:今後はどんな風に展開していくんですか。

田上:ラボグロウンダイヤを使ったジュエリーブランドは今後国内外でどんどん出てくるだろうし、やっぱり個性が大事だと思うんですよね。個性がないと深いファンはできませんし。

そのためには、地球や他人のことにも配慮しつつ、お客さまの願望も大事にして楽しんでいけるような商品づくりを心がけたいですね。特にデザインは大事だと思っていて。ジュエリーをやったことがないような、例えば建築家にデザインを頼んでみるのもいいかな、なんて思っています。

シトウ:じゃあこれから、よりクセの強いアイテムが出てくる?

田上:いまはまだジャブぐらいですからね(笑)。

シトウ:これでジャブ? それはすごい、私としてはとっても嬉しい。今後が楽しみです!

 

聞き手=シトウレイ 構成=久野照美、田中友梨 撮影=杉能信介